「皆、そっちは元気? こっちは相変わらず。ティアはどうしようもないし、アティナはバカだし……」

 そう言って、アフロディテは写真立てを見ながら笑う。だが、もの悲しそうにも見えるその笑みに疑問を投げかけるものはいない。年頃の女の子の部屋とは思えない殺風景な部屋の中に佇む彼女は、力の無い笑顔を終えると

「はぁ。今度、アティナの従軍記者に任命されたのよ。もう面倒……。お父様は剣を持っていけって煩いし……。ええ、わかってる。お父様に対して凄い恩があるのはちゃんと理解してるわ。でも、剣だけはどうしても抜きたくないのよ……」

 アフロディテはそう言って壁に立てかけられて埃をかぶっているデカ物に目を向けた。黒い布と鎖で巻かれたそれを見た彼女はキリッと眉を吊り上げて

「大丈夫……私はもう、剣は抜かないって誓ったから。もう貴方たちのように仲間を失うのは嫌。だから新聞記者をしているの……」

 彼女はそう言い終えると、優しく、丁寧に写真立てを置く。

「皆、私がおばあちゃんになっても、からかわないでよ? 皆若いままなんだから」









2012 Sibatarai project 5