穏やかな光が差し込む室内。その窓際に座るアルテミスは、芳醇な実りが齎したワインに艶やかな口元をつけて微笑していた。

「貴方が消えて、もう何日でしょう」

アルテミスは部屋の隅のほうに置いてある金細工の鳥篭を見ながら笑う。鳥篭には羽が一枚挟まっている。かつて飼育していた白い鳥のものだ。

「貴方が羨ましい……なんて思ったりもした。でも、私もきっと鳥篭から出て見せます。だって、もうすぐあの方が参られるから。あの方と一緒なら、きっと私は何も出来ない雛から、天へと羽ばたく鳳へと代わることができるでしょう」

そう言って笑みを溢すアルテミスは再びワイングラスに、柔らかな唇を押し当てた。

「はぁ……。早く会えないかな、アティナ様」

まるで男に心奪われた生娘のように、彼女は頬を染めつつ、窓の外を眺めながら溜息を溢す。その瞬間、一羽の白い鳥が翼を広げて、窓の外を横切っていった。









2012 Sibatarai project 5