「母上、行ってきます」
アティナーデはそう言うと、今は亡き、紅玉の戦乙女メティシアに頭を下げた。彼女は近日中にでも対立国『サトゥル』に輿入れする。政略結婚の道具として送られるアティナーデだが、その表情は曇り一つ無く、むしろ清清しかった。
「きっと、母への償いをあのクソ親父にさせてみせます。それまで、どうかここでお待ちください」
彼女はにこやかに微笑むと、再び墓標に向けて頭を下げ、意気揚々とその場から立ち去って行った。
2012 Sibatarai project 5